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2026-09-13 19:43:00
夢中は、学びの入口です
「同じ遊びばかりしているんです」
子育てや療育の場で、そんなご相談をいただくことがあります。
電車ばかり並べている。
同じ動画ばかり見たがる。
同じ絵を何度も描く。
同じ道順にこだわる。
同じおもちゃばかり選ぶ。
大人から見ると、
「もっといろいろな遊びをしてほしい」
「このままで大丈夫なのかな」
「違うことにも興味を持ってほしい」
と心配になることがあります。
その気持ちは、とても自然なものだと思います。
子どもの成長を願うからこそ、世界を広げてあげたいと思う。
新しい経験をしてほしいと思う。
いろいろなことができるようになってほしいと思う。
だからこそ、大人は時に、
「もうそれは終わりにしよう」
「違う遊びをしてみよう」
「いつまで同じことをしているの?」
と言いたくなることがあります。
でも、私は時々そこで立ち止まって考えます。
その“同じこと”は、本当に困ったことなのでしょうか。
子どもが何かに夢中になっている時、実はその中で、たくさんの力を使っています。
よく見る力。
覚える力。
比べる力。
順番を考える力。
違いに気づく力。
何度も繰り返す力。
うまくいかなかった時にやり直す力。
もっと上手にやろうと工夫する力。
大人には「ただ遊んでいる」ように見えても、子どもは遊びの中で、たくさん考えています。
たとえば、電車を何台も並べている子どもがいたとします。
大人から見れば、「また電車を並べている」と見えるかもしれません。
でもその子は、
色の違いを見ているかもしれない。
車両の形を比べているかもしれない。
長さの順番を考えているかもしれない。
駅名を覚えているかもしれない。
昨日と同じ並び方を再現しようとしているかもしれない。
そこには、観察力や記憶力、分類する力、順序立てて考える力が使われています。
そして何より大切なのは、
「好きだから続けられる」
ということです。
大人でも、興味のないことを長く続けるのは大変です。
でも、好きなことなら時間を忘れて続けられる。
もっと知りたいと思える。
何度失敗しても、もう一度やってみようと思える。
子どもも同じです。
好きなことは、子どもが自分から動き出す力になります。
だから私たちは、子どもの「好き」をすぐに止めるのではなく、
「この好きなことを、どう次の成長につなげられるだろう」
と考えたいと思っています。
たとえば、電車が大好きな子なら、
「赤い電車は何両あるかな?」
と数につなげることができます。
「どの駅に行きたい?」
と会話につなげることもできます。
地図を見ながら、
「次はどこかな?」
と場所や順番の理解につなげることもできます。
友達と一緒に線路を作れば、
「貸して」
「一緒にやろう」
「次はここにつなげよう」
と、人とのやり取りにも広がります。
好きなキャラクターがある子なら、そのキャラクターを使って文字を覚えることもできます。
数字が好きな子なら、数字から時間やお金、生活の理解へつなげることもできます。
絵を描くのが好きな子なら、
「これは何?」
「どんな色?」
「誰と一緒にいるの?」
と、言葉や物語へ広げることができます。
つまり、
「好き」は、学びへの入り口になることがあります。
療育というと、
「苦手なことを練習する場所」
と思われることがあります。
もちろん、生活していく中で必要なことを少しずつ練習することも大切です。
でも、苦手なことだけを見続けていると、子どもはだんだん、
「またできなかった」
「自分は苦手なんだ」
という気持ちを積み重ねてしまうことがあります。
だからこそ、私たちは、その子が自然に力を発揮できる場所を見つけたい。
その入口の一つが、
「夢中になれること」
だと思っています。
夢中になっている子どもの表情を見ていると、本当に生き生きしています。
そこには、
「やらされている」
ではなく、
「やりたい」
があります。
この「やりたい」という気持ちは、とても大きな力です。
大人が教えようとしなくても、自分から何度も繰り返します。
誰かに褒められなくても、もっと上手になろうとします。
それは、子どもの中から出てくる学びの力です。
だから私たちは、
「この遊びをやめさせた方がいいかな」
と考える前に、
「この子は、何にこんなに惹かれているのだろう」
と考えてみたいのです。
色なのか。
音なのか。
動きなのか。
順番なのか。
形なのか。
同じものが並ぶ安心感なのか。
そこをよく見ると、その子の得意なことや、好きなこと、物事の捉え方が少しずつ見えてくることがあります。
それは、支援を考える時の大切なヒントになります。
もちろん、好きなことだけをしていればいい、という意味ではありません。
生活していくためには、苦手なことにも少しずつ取り組む必要があります。
集団の中で待つこと。
人の話を聞くこと。
身支度をすること。
新しいことに挑戦すること。
そういった経験も必要です。
でも、その時にこそ「好き」が助けになります。
苦手な活動の中に、好きなものを取り入れる。
好きなことをきっかけに、少しだけ新しいことへ広げる。
そうすることで、
「できないからやらない」
ではなく、
「これならやってみようかな」
に変わることがあります。
支援とは、子どもを大人の考える「普通」に近づけることだけではありません。
私は、
その子が持っている力を見つけ、その力を使って生きやすくしていくこと
も、とても大切な支援だと思っています。
保護者の方から、
「この子、これしか興味がなくて」
と言われることがあります。
そんな時、私は、
「それしかない」のではなく、
「そこから始められる」
と考えたいと思っています。
一つでも好きなものがある。
一つでも夢中になれるものがある。
それは、その子の大切な財産です。
そこから人とつながることがある。
そこから言葉が増えることがある。
そこから数字や文字を覚えることがある。
そこから将来の仕事につながることだってあるかもしれません。
子どもの可能性は、今この瞬間だけでは分かりません。
だからこそ私たちは、
「今できないこと」だけで、その子の未来を決めたくありません。
そして、
「こんなことばかりしている」
ではなく、
「こんなにも夢中になれるものがある」
という見方も大切にしたいと思います。
子どもの「好き」を大人が一緒に面白がる。
「すごいね」
「そんなところまで見ているんだね」
「教えて」
と声をかけてみる。
すると、子どもは自分の好きな世界に、大人を少しだけ招いてくれることがあります。
その瞬間から、遊びは一人だけのものではなく、人との関わりへ広がります。
そして、
「伝えたい」
「見てほしい」
「一緒にやりたい」
という気持ちが生まれます。
そこには、コミュニケーションの芽があります。
だから今回の動画では、
「夢中は、学びの入口です」
という言葉をお伝えしました。
同じ遊びばかりしていても、すぐに止めなくていい。
好きなことに夢中になっていても、すぐに心配しなくていい。
まず、
「この子は、今ここで何を学んでいるのだろう」
と少しだけ見てみてください。
今まで「困ったこと」に見えていたものの中に、
その子の強みが見つかるかもしれません。
そしてその強みが、
次の成長につながる入口になるかもしれません。
私たちエヌ.かんぱにぃは、
子どもの苦手なところだけを見る支援ではなく、
その子が持っている力、
好きなこと、
夢中になれること、
その子らしさを大切にした支援を続けていきたいと考えています。
今日、ひとつだけ。
夢中は、学びの入口です。
子どもの「好き」を止める前に、
ほんの少し、
その世界を一緒にのぞいてみませんか。
そこには、その子の未来につながる何かが隠れているかもしれません。
特定非営利活動法人エヌ.かんぱにぃ
中里りか





